甲府地方裁判所 昭和52年(ワ)109号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【説明】
本訴の予備的請求の原因は、次のとおりである。「6、仮に前記2(二)記載の分配金三〇〇万円相当の庭石の売買が認められないとしても、(一) 前記のとおり、原告と被告は合意により昭和五〇年一一月本件組合を解散することとしたが、その際、残余財産としては、時価六〇〇万円相当の庭石があつたところ、その庭石はすべて被告が取得し、原告に対しては金銭により分配する旨約した。(二) 出資割合は原告と被告と二分の一宛であつたのでこれにもとづいて分配されるべきこととなる。」
【判旨】
三そこで、金三〇〇万円の債権に関する予備的請求の当否について検討する。
請求原因6(一)の事実は当事者間に争いがない。そして残余財産の分配の基準が争点である。残余財産分配については民法六八八条二項に従い出資の価格を基準とすべきところ、本件全証拠をもつてしても右基準とすべき出資の価格が明らかでない。なるほど<証拠>を総合して考えると、本件組合契約締結時、原告は造園、庭石の販売等については素人であつたが、被告はある程度の経験を有していたこと、原被告の本件組合契約に基づく労務の提供について、原告側が原告の体の不調のため原告の妻を働かせざるを得なかつたこと、原告妻と被告が一緒に働きに出た場合、「日当金」の額は、それぞれ金二〇〇〇円、金三〇〇〇円と彼此相異していたこと、当事者双方はそれぞれ昭和四八年まで少なくとも金一〇〇万円乃至六五万円の金銭による出資をしたこと、同四八年に原告が金三〇〇万円、被告が金一〇〇〇万円の金銭出資をしたがこれらはすべて組合事業の利益金により利息をつけて償還されていること、原告は車庫敷地を提供し、被告は車庫材料を提供したこと、電話は双方の家庭に設置されている電話器を双方の負担により利用してまにあわせたことが認められるが、他方証人塩谷よし江の証言及び被告本人尋問の結果によると他にも金銭、労務、信用等の出資があつたがこれを明確にする帳簿の記帳をしていなかつたことが認められ、これらを総合して判断するとき結局出資の価格について証明がないといわざるをえない。
残余財産分配につきその基準とすべき出資の価格が明らかでない場合には、要件事実の立証がないとして原告のこれにもとづく請求を棄却すべきであるという反論も予想されるが、さらに何らかの基準を探求することが組合の特質及び当事者の意思に合するものといわなければならない。そして民法解釈の指導理念である信義誠実の原則に照らして考えるとき、他に特段の事情がないかぎり、当事者に平等に分配するを相当とする。したがつて、本件において右特段の事情の主張も立証もないので、当事者平分として計算することとする。そうするとき残余財産の分配としては原告の受領すべき分は金三〇〇万円であるといわねばならない。
(東孝行)